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保育者の実践が、言葉にされる職場へ
― 承認欲求を、指導と対話を支える力として考える ―

 承認欲求という言葉は、近年、SNSでの評価や他者からの反応を求める気持ちとして語られることが多くなりました。そのため、どこか否定的に受け止められることもあります。けれど、人が自分の存在や行動を関係の中で受け止めてもらいたいと感じること自体は、不自然なものではありません。保育者にとっても、自分の実践が見られ、言葉にされ、意味づけられる経験は、安心して判断し、指導や対話を受け止めるための土台になります。

1. 「気持ちを支える承認」と「行動を見る承認」は異なる

 承認といっても、そのあり方には違いがあります。
「頑張っているね」「助かっているよ」といった言葉は、相手の気持ちを支え、関係をあたたかくするうえで大切です。ただ、それだけでは、どの行動や工夫が実践の質につながっていたのかまでは見えにくいことがあります。

 だからこそ、承認を一時的な励ましにとどめず、具体的な行動に目を向けていくことが大切になります。どの場面で、どのような行動があり、それが子どもや職員同士の関係にどのような意味を持っていたのかが言葉になると、承認は単なる気分の支えにとどまりません。


 「今日の声かけはよかった」だけでなく、どのような関わりが子どもの安心や主体的な行動につながったのかが言葉になることで、保育者は自分の実践の意味を確かめやすくなります。
承認とは、ただ褒めることではありません。行動を見て、その意味を言葉にすることです。


 

2. 承認の偏りは、関係に歪みを生む

 承認には、偏りが生まれることがあります。
 仕事ぶり全体の印象がよい職員の行動は、細かな工夫まで見えやすくなる一方で、目立たない職員の働きは、同じように意味のある行動であっても言葉になりにくいことがあります。また、目に見えやすい成果や、発言の多い人の工夫ばかりが言葉になりやすいこともあります。そのような状態が続くと、承認は励ましではなく、比較や距離を生む要因にもなります。

 「よく認めているつもり」でも、一部の人、一部の場面、一部の成果に承認が集中していることがあります。すると、言葉にされにくい働きは見えないものとなり、支えている側の職員ほど、手応えを得にくくなることもあります。
承認は、あればよいというものではありません。誰の、どのような行動が、どのように言葉になっているのか。その質が問われます。

 

3.情報を資産とするためには

 職員同士が互いの良さや工夫を認め合う関係は、多くの現場で望まれています。ただ、そのような関係は、掛け声だけで自然に生まれるものではありません。

 まずは、園長や主任、リーダーが、職員の行動を具体的に見て言葉にすることです。その経験が積み重なることで、「見てよい」「言葉にしてよい」という前提が少しずつ育ちます。

 ピアな承認は、制度として置くだけでは根づきません。具体的な行動が言葉になる経験の積み重ねの中で、関係の中から立ち上がっていきます。


4. 承認が欠けた状態では、指導は歪みやすい

 リスクへの対応や基本的なスキルについては、改善や指導が必要になる場面があります。それは安全を守るためであり、専門職としての前提を整えるためでもあります。

 しかし、日頃の行動や工夫が見られていない状態での指導は、たとえ指導する側にその意図がなくても、受け取る側には、「普段の働きは見られていないのに、できていないことだけを指摘された」と感じられることがあります。その結果、防御的な反応や沈黙が生まれ、ときには関係の悪化を招いてしまうこともあるでしょう。

 逆に、日常の中で行動が言葉になり、互いの働きが認められている現場では、指導は関係の中で位置づきます。できていることも見られている。そのうえで、今ここは見直す必要がある。そう受け止められることで、指導は本来の意味を持ちやすくなります。



 

5. 承認が機能しているかは、日常の現象に表れる

 では、承認が機能しているかどうかは、どこに表れるのでしょうか。
職員の具体的な行動が言葉になっているか。特定の職員や関係に偏らず、さまざまな場面で認める言葉が交わされているか。指導の場面で、防御や沈黙ばかりが生まれていないか。会議や面談の中で、印象ではなく事実に基づいたやりとりがなされているか。

 承認は、制度として導入すれば機能するものではありません。日常の中で、どのような行動が見られ、どのような言葉として残っているのか。その積み重ねの中に、関係の質は表れます。

 

6. 会議の質も、日常の承認の延長にある

 会議の場で意見が出ない背景にも、同じ構造があります。
会議の進め方や場の設計は大切です。しかし、安心して発言できる土壌は、会議の時間だけで整うものではありません。日常の中で、自分の行動や工夫が見られている。小さな気づきや迷いを言葉にしても、すぐに否定されない。そのような経験があるからこそ、会議の場でも発言しやすくなります。

 会議での発言のしやすさは、日々の承認のあり方と切り離して考えることはできません。

 

7. 承認は、言葉として残る関係である

 承認は、まず増やしていく必要があります。保育の現場では、日々の実践や工夫が十分に言葉にならないまま過ぎていくことが少なくありません。そのうえで、どのような行動が、どのような言葉として関係の中に残っているのかが大切になります。その蓄積があるからこそ、指導も対話も受け止められやすくなります。承認は、専門職として育ち合うための、関係の土台です。
 

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