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現場課題の解決へ、流れをつくる「ちょいp」サイクル

 保育の現場には、何事も計画を立て「反省」を記録・記載する文化が根付いています。しかし、その文化が本来のPDCAサイクルを回すためではなく、行政監査対応などの「保育事務としての計画や反省」に終始してしまっている園も少なくありません。計画や反省は記録として残されているものの、その内容が次の実践に接続されないまま、同様の対応が繰り返されている、といった状況について話をうかがうことも多くあります。

 また人員不足や職員の入れ替わりによる情報の断絶も相まって、実態としては目の前の対応に追われ続ける「DDDD(ずっとDo)」の濁流に飲み込まれている面も否定できません。このような状況下で、「PDCAを回そう」という教科書通りの正論は、現場の自走を促すどころか、ますます形骸化した事務作業を増やす結果を招きかねません。

1.サイクルはどこかで止まれば先はない

 そもそもサイクルというものは、途切れた瞬間に機能しなくなります。それは血流や金融と同じ。資金繰りが止まれば倒産するのと同じです。現場において最も大切なのは、立ち止まって精緻な計画書を作ることに時間を割き、挙動を遅くしてしまうことではありません。まずは「流し続けること」ではないでしょうか。

 そこで提案したいのが、大文字のPlanではない、小文字の「ちょいp」です。 軽く見定めて、まずはちょっとやってみる。すると振り返り、改善策を考える。この「ちょいp」サイクルを高速で回し、一回りして戻ってきた時には、最初よりも目標が立体的になっているはずです。

2.「ちょいp」が本領を発揮する、園独自の改善領域

 この「ちょいp」が最も力を発揮するのは、実は日々の保育実践そのものよりも、園独自の「+αの改善活動」の領域です。

 保育の専門的な知見は、すでに多くの情報が蓄積され、公知として利用可能となっています。しかし、どの情報をどのように使うかは実践者が選ばなくてはなりません。また「今、この園の、このチームに必要な工夫は何か?」という問いに、既成の正解はありません。こうした選択や正解のない領域で、重たい計画に縛られて足が止まるよりも、例えば「落ち着きが出てきた5月の連休明けに、毎週木曜日、5分だけ話し合う時間を取ってみる」といった「ちょいp」で軽やかにサイクルを回し、実践を通じて自分たちだけの正解を形にしていく。このスピード感こそが、質を高める鍵となるのではないでしょうか。

3.「実践の記録」というアイテムが、速度と熱を守る

 この軽やかなサイクルを支える重要なアイテムが、「実践の記録」です。 いくら正解のない独自課題だとしても、過去に行った自分たちのオリジナルのトライアンドエラーの記録は有効な情報です。過去を知ることで、避けるべき無駄な失敗を回避できるのです。

 失敗そのものは無駄ではありません。活かすこともできます。しかし、同じ失敗が重なれば、現場の「速度」と「熱」は奪われてしまいます。それは結果として、サイクル自体を壊すことにも繋がりかねません。過去の実践情報を活用することで、無駄な足踏みを防ぎ、「ちょいp」の精度をより高めていくことができます。

4.慢性的な「余裕のなさ」という現場のリアル

 多くの園で、気づきを改善に繋げたくても、上手くいかない「改善の壁」があることも事実です。慢性的な人手不足や、膨大な保育事務の負担です。+αの活動が、日常の業務をさらに圧迫してしまえば本末転倒と言えます。

 現状の負担を直視すれば、+α活動は、極限まで軽くし、心理的・時間的なハードルを下げなければ、継続(回し続けること)など絵に描いた餅になってしまいます。重たいPDCAという「鎧(よろい)」を脱ぎ捨て、過去の知恵を借りながら「ちょいp」という軽やかさを選ぶことは、現場を守りながら質を追求するための、現実的な選択肢ではないでしょうか。

5.理念という「北極星」があるからこそ、現場は軽やかになれる

 ただし、この「ちょいp」を機能させるためには、大前提となる条件があります。それは、園がどこに向かうのかという本質的な「理念」や「ビジョン」、それから「中長期的な計画」という軸が、組織の中で揺るぎなく据えられていることです。(中長期計画の課題設定のページへ)

 向かうべき方角さえ見失わなければ、現場の足元は「ちょいp」くらいの軽やかさでちょうどいい。むしろ、その余裕(余白)があるからこそ、職員は自律的に動き、変化に強いしなやかな組織へと育っていくのではないでしょうか。 

結び:現場の呼吸を整え、代謝を上げる

「ずっとDo」で走り続ける現場に必要なのは、新しい管理の手法ではなく、今の流れを止めずに質を高めていくための「小さなリズム」だと思います。

 理念が指し示す方角を見失わず、独自の課題には「ちょいp」を積み重ねる。日常の「改善への小さな気づき」と「サイクル回し続けること」の積み重ねこそが、園の代謝を上げ、子どもたちへの質の高い保育を支える実務の要(かなめ)となります。

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