よねだ保育園サポート
「階段」から「年輪」へ。ポストの有無に縛られず、個々の専門性を太くする「年輪型成長モデル」
キャリアパスの整備は今や園の急務ですが、多くの現場で「上が詰まっていて先が見えない」という閉塞感を生んでいます。また、園長先生方からは「職員との面談が終わり、話した内容が次の行動に落ちないまま時が過ぎてしまう」といった状況についてお話をうかがうことも少なくありません。
こうした行き詰まりは、キャリアパスを「上に登るための階段」と捉えているからではないでしょうか。階段には必ず「終わり」があり、上に行けば行くほど「枠(ポスト)」は少なく、限りがあります。しかし、保育現場を支える専門職としての成長に本来、枠や限度などありません。
そこで提案したいのが、限られたポストを目指すような仕組みではなく、一本の「理念の柱」を中心に、外へと無限に年輪を重ねていく「年輪型の成長モデル」です。
1.登るから太くなるへ:それぞれの樹種で花を咲かせる
新人にしか出せない瑞々しい魅力があり、中堅には中堅の、ベテランにはベテランにしか辿り着けない静かな洞察力や共感力があります。若いうちは身体を存分に使い、経験を積むほどに知恵や「余白」がその人の魅力となっていく。これは上下の差ではなく、中心からどれだけ年輪を太くし、豊かな実をつけてきたかというプロセスの違いです。大切なのは、自分という樹木が今、どの方向に枝を伸ばし、次はどんな花を咲かせたいのかを、天空に輝く「北極星(理念)」に照らして描くことではないでしょうか。
2.成長を支える「大地と芯柱」
この構造を、大地に根を張り、空へと伸びる樹木のイメージで整理してみます。
・大地:共通の土台(基礎スキル)
社会人・専門職として欠かせない共通の知識、援助スキル、接遇、安全意識などの層です。ここは、全ての職員が「安心の品質」を担保するためにしっかりと根を張るべき、成長の出発点となる領域です。
・芯柱:園の理念(北極星)
樹木が空に向かって伸びるための揺るぎない軸です。この理念を見失わなければ、それぞれの樹種(特性)に合わせて、自由に枝葉を広げていくことができます。
・広がり:専門性の年輪(組織と個人の共創)
基礎の層からさらに外側へと、個々のステージや特性に合わせて年輪を太くしていく領域です。
「管理職」として組織運営を支えるか、あるいは「専門職」として、知見とスキルの飽くなき獲得を目指すか。本人の目指す意向を尊重しながらも、園の現状や未来像に照らし、組織としての期待を重ね合わせて「進むべき道」を共に定めていきます。
3.「対話」で成長の軌跡を確かめ合い、チェックリストを卒業する
年輪型の成長は、「できたから階段を上がる」といった一過性の到達度を測るものではありません。最初から完成形で運用するのではなく、まずは面談の中で「今年はここを太くする」という焦点を一つだけ定めてみる、といった小さな合意から始めていく。その積み重ねが、やがて「今年はこれだけ年輪を太くできた。3年後はさらに豊かな実をつけよう」と、一人ひとりの「成長の軌跡」を丁寧に合意していくプロセスへと育っていきます。
このような園長や上長との対話があるからこそ、従来の「やる・やらない」の判定でしかないチェックリスト的な評価から脱却し、生きた成長の物語を描くことが可能になります。この個別育成の計画(目標管理)には、「定性的(質的)な目標」に向かって、「定量的(具体的)なアクション」を立てます。小さい目標達成をくり返す「ちょいp」から始まるPDCAサイクルのイメージです。(「ちょいp」から始まるPDCAサイクルは こちらから)
4.エピソード(質)と回数(量)の掛け算で、専門性を証明する
では、その「太さ」をどう評価(価値付け)するのか。ここでも「判定」ではなく「対話」が鍵となります。
◎ エピソードベースの振り返り(思考の質)
「できた・できない」の結果だけでなく、どう葛藤し思考したかという「エピソード」を成長の根拠とします。現場の中で得た気づきや深い内省という「思考の専門性」を可視化します。
◎ 回数や件数の織り交ぜ(行動の量)
そこに、事実としての「回数」や「件数」という定量的要素を織り交ぜます。これらはノルマではなく、自分がどれだけ挑戦し、大地を耕してきたかという成長の「足跡」です。
・チャレンジの回数: 新しい試みや環境構成を工夫した回数
・提案の回数: 会議での発言や、改善案の提出数
・試行錯誤の回転数: 一つの課題に対し、振り返りを行い、次の見通しを立てて再実践した回数
◎ 成長の実感という「エビデンス」
回数が多いことは「行動の主体性」を示し、エピソードが深いことは「思考の専門性」を示します。この「量と質の掛け算」が揃って初めて、確かな「実践の実感」が生まれるのです。
注意すべきは、「回数」そのものを目標にしないことです。回数はあくまで成長の「足跡」であり、「これだけやった」という事実は、自分自身の自信(実践の実感)を支えるためのエビデンス(証拠)として活用するのです。
結び:中心から、無限の年輪を描く
成長のマックス(限界)を決めてから枠を埋める(外から中へ書く)のではなく、中心にある理念という芯柱から筆を走り込ませ、無限に外へと広げていく(中から外へ書く)。
役職の「階段」という物差しを手放し、一人ひとりが自らの特性という彩りで、園の理念を体現する年輪を大きく、太く広げていく。この「終わりのない成長の物語」を描き続けることこそが、園の代謝を上げ、子どもたちへの質の高い支援を支える実務の要(かなめ)となります。