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中長期計画が活かされないのは、「課題の設定」に理由がある

 中長期計画はあるのに、日々の保育や運営に活かしきれていないと感じる場面はないでしょうか。 現実はより深刻で、そもそも計画が現場と「共有」すらされていないという状況も少なくありません。なぜ、多大な労力をかけて策定した計画が、組織の共通言語にならないのでしょうか。その根底には、運用のルール以前に、設定された「課題」そのものに現場とのズレが生じている可能性が考えられます。

1. 現場の「即時の判断」と計画の距離

​保育の現場は、即時の判断の連続です。

・ある子どもへの関わり方をどうするか

・職員間での連携をどのように図るか

・保護者への伝え方をどうするか

 こうした具体的な判断は、その場の状況や個人の経験に委ねられ、積み重ねられていきます。しかし、子どもの育ちを見守る眼差しや、保護者の育児への援助・支援のスキル、アセスメント力、そして職員間の連携力といった本質的なテーマは、短期間で変化が見えるものではありません。本来、これらこそ中長期的な視点で計画と結びつけ、積み上げていくべき課題ではないでしょうか。

2. なぜ計画は「共有」されず、形骸化するのか

​ 計画に示された課題が現場の実感と結びついていないとき、計画は現場にとって「自分たちの仕事」ではなくなってしまいます。 現場の具体的な悩みや葛藤が計画の中に生きた言葉として反映されていないと、職員にとって計画は「上層部が決めた、自分たちとは無関係な書類」に見えてしまうかもしれません。この「実感のズレ」こそが、共有を阻む大きな壁となります。計画という地図を持たずに、それぞれが個人の経験だけで判断を下す状況では、組織としての歩みを一つにし、改善や成長をすすめることは困難だと言わざるを得ません。

3. 「現場の気づき」から描く、確かな成長像

 計画を「自分たちのもの」にするためには、現場の意向や日々の気づきを踏まえた「成長像の設定」というプロセスが欠かせないと考えます。 単なる数値目標を掲げるのではなく、先生たちが日々感じている「もっとこうしたい」「ここが気になる」という実感を丁寧に汲み上げ、それを「少し先の園の姿」として言語化すること。このプロセスを経て初めて、計画は血の通ったものになり、現場が主体的に動くための拠り所となるのではないでしょうか。

4. 「印象」で終わらせないための目安(評価軸)

 設定した成長像に向かっているかを確認するための「目安」が曖昧だと、振り返りはどうしても主観的な印象に寄ってしまいます。 「何となく良くなっている」といった言葉で終わってしまうと、具体的に何がどう変わったのかを共有できず、次にどう進むべきかの見通しも持ちにくくなります。変化を可視化する指標があってこそ、取り組みの手応えを実感し、次の一歩を踏み出すことができるのだと考えられます。

結論:課題のひとつに「現場の言葉」を反映させる

 計画が活用・共有されていないと感じるなら、運用の仕組みを整える前に、まずは「課題の設定」そのものに立ち返る必要があるかもしれません。

 

いま現場で向き合っている切実な課題が、どのような言葉で計画に位置づけられているか。その関係を明確にし、課題の一つに「現場の言葉」を反映させ、少し先の姿へと結びつける言語化ができれば、計画は組織の共通言語へと近づいていきます。

 

まずは、いま目の前にある課題と、計画に書かれた内容との間に、どのような距離があるのか。そこを直視し、確かめてみること。それが、動かない計画を「組織の力」に変えるための、大切な出発点になるのではないでしょうか。

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