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実務の知

 保育園実務の20年、仲間と共に歩み、800件以上の第三者評価の現場で、園長先生や主任の方と対話を重ねる中で見えてきた、園運営の実務における「問い」と「気づき」を綴っています。

 

仕組みやルールの「共有」から、現場との「共感」へ

 単なる理論ではなく、日々の判断の拠り所となり、組織の明日を少し明るくするような「生きた知恵」を共有できれば幸いです。

・中長期計画が活かされないのは、「課題の設定」に理由がある

中長期計画を策定したのに、日々の保育や運営に活かしきれていないと感じる場面はないでしょうか。

現実はより深刻で、そもそも計画が現場と「共有」すらされていないという状況も少なくありません。なぜ、多大な労力をかけて策定した計画が、組織の共通言語にならないのでしょうか。その根底には、運用のルール以前に、設定された「課題」に現場とのズレが生じている可能性が考えられます。

・マニュアルを「形骸化した文書」から、現場の「使える道具」へ

〜標準化を構造で捉える「4つの柱」と、組織の代謝を支える視点〜

「マニュアルがあるのに、職員からは、標準化が課題であるとの認識が示されている」。 第三者評価の現場で、そのような光景を目にすることがあります。マニュアルの実効性が十分に発揮されない背景には、単なる整備の問題だけではなく、それが現場で参照される「共通の物差し」として機能しきれていない側面があるのかもしれません。

 マニュアルは本来、職員が迷いなく動くための「使える道具」や「実行動線(ナビゲーション)」としての役割が期待されます。その実現に向けて、単なるルール化を超えた、以下の4つの構造的な視点から見つめ直してみてはいかがでしょうか。

・「階段」から「年輪」へ。ポストの有無に縛られず、個々の専門性を太くする「年輪型成長モデル」

 キャリアパスの整備は今や園の急務ですが、多くの現場で「上が詰まっていて先が見えない」という閉塞感を生んでいます。また、園長先生方からは「職員との面談が終わり、話した内容が次の行動に落ちないまま時が過ぎてしまう」といった状況についてお話をうかがうことも少なくありません。

 こうした行き詰まりは、キャリアパスを「上に登るための階段」と捉えているからではないでしょうか。階段には必ず「終わり」があり、上に行けば行くほど「枠(ポスト)」は少なくなります。しかし、保育現場を支える専門職としての成長に本来、限度などありません。

 そこで提案したいのが、限られたポストを目指すような窮屈な仕組みではなく、一本の「理念の柱」を中心に、外へと無限に年輪を重ねていく「年輪型の成長モデル」です。

・学びを園の資産に変える、研修の活かし方

 研修で得た内容が共有されても、その後の実践の機会が設けられないまま日常の業務に埋もれ、やがて話題として扱われなくなる、といった状況について話をうかがうことがあります。組織全体としての変化に繋がりにくくなっていると捉えられる場面もあるのかもしれません。

 これは内容の良し悪しだけではなく、園として「学び」をどう位置づけ、受け止めるかという「仕組みと心理的な土台」の整え方に、理由があるのではないでしょうか。

「良くなりたい」「学びたい」という職員や組織の意欲を、一過性のイベントに終わらせないための視点を整理してみます。

・現場課題の解決へ、流れをつくる「ちょいp」サイクル

 保育の現場には、何事も計画を立て「反省」を記録・記載する文化が根付いています。しかし、その文化が本来のPDCAサイクルを回すためではなく、行政監査対応などの「保育事務としての計画や反省」に終始してしまっている園も少なくありません。計画や反省は記録として残されているものの、その内容が次の実践に接続されないまま、同様の対応が繰り返されている、といった状況について話をうかがうことも多くあります。また人員不足や職員の入れ替わりによる情報の断絶も相まって、実態としては目の前の対応に追われ続ける「DDDD(ずっとDo)」の濁流に飲み込まれている面も否定できません。このような状況下で、「PDCAを回そう」という教科書通りの正論は、現場の自走を促すどころか、ますます形骸化した事務作業を増やす結果を招きかねません。

・第三者評価の活用:やらされる評価から、自ら使いこなす評価へ

 毎日の保育や運営に追われる中で、数年に一度やってくる第三者評価が「義務」としてこなすだけで精一杯になってしまう。それは、ごく自然な姿かもしれません。

 しかし、膨大な資料を準備するだけでなく、訪問調査のために勤務シフトを調整し、当日も時間を割き、受審費用を投じるこの機会を、ただ基準をクリアするだけで終わらせてしまうのは、あまりにもったいない。

 各評価機関の評価の「精度」が必ずしも一様ではないことが現実であるなら、評価者に主導権を預け、ただ結果を待つだけの受動的な評価から、園を良くするための自ら使いこなす能動的な評価へと、マインドセットの転換を図ることが重要になると思います。ここでは、第三者評価の「実務的な活用」のコツをお伝えします。

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